「戦争中」よりも「戦後」の方が辛い
アメリカでは2013年に出版され大きな反響となった本ですが日本でも2015年に発売されました。この本を購入するきっかけは、いたってシンプルで書店にある「ノンフィクション」のコーナーを見ている時にたまたま目に入ったからです。本編は全16章の377ページと大容量ながらも読み応えはあります。今年2017年に映画化が決定しているのですが、映画が公開される前に見ようと購入したのですが最初に書くと「この本は日本人なら読むべき本」だと思った。
ジャーナリストであるデイヴィット・フィンケルは2007年4月にイラクのバグダットに赴き現地で戦うアメリカ陸軍第16歩兵第2隊を約1年間取材した。帰国後にイラクでの様子を「兵士は戦場で何を見たか」という本にまとめ、取材は終わるはずだったが、戦地で知り合った兵士たちから多くの帰還兵が戦後も苦しんでいることを知らされる。それを聞いたフィンケルは帰還兵とその家族、軍、医療関係者に至るまで取材を行い、2013年にこの本を執筆した(Wiki参照)
では、早速感想とレビューを書いていきたいと思います。
感想・レビュー!
アフガニスタンとイラクに派遣された兵士は200万人。そのうち50万人がPTSD(心的外傷後ストレス障害)とTBI(外傷性脳損傷)に苦しめられているという事が書かれています。戦争という悲劇は戦時中だけではなく、戦後の兵士たちまで襲うという事がこの本を見てよく解ります。イラク戦争を舞台にした映画「アメリカン・スナイパー」の主人公であったクリス・カイルが戦争後の後遺症に苦しめられている様子が劇中でも描かれていました。
この本では5人の帰還兵だけではなくその家族、軍、医療関係者などから取材を行い執筆した本です。この本で登場するトーソロ・アイアティはIED攻撃(即席爆発装置)を受け自身が負傷しながらも横転したハンヴィーから兵士2人を救い出したが専有のハーレルソンを助けられなかった。戦後は鬱、暴力行為、健忘症、たちたび夢に出て来るハーレルソンに苦しめられていると書かれています。
日本も戦時中、戦後の話しを後世に残そうと写真や、建造物などを残そうとしていますが「あまりにも残酷な描写だから放送出来ない」「子供に見せられない」という言葉を見ると呆れてしまう事がある。私は思うに「残酷」だからというのは少し違うと思う。親や祖父祖母から聞いた戦争の話、写真、映像を見せ聞かせるというのは今を生きている人の役目のような気がします。
勿論誰にも言えず苦しんでいった人もいるが、自分の周りから聞いた話というのは「今後、こういった事がないように」と言える話です。「日本は平和ボケしている」とよく聞きますが私が最近思ったことは平和ボケしているのではなく「明るいもの以外、見ようとしていない」というのが今の日本ではないでしょうか。暗い未来、暗い過去から目を逸らし過去の明るい思い出、明るい未来だけ見るというのは間違っている。
だからこそ今回の「帰還兵はなぜ自殺するのか」を読んだ方が良いと思った。戦時中の話しではなく、むしろ戦後の話が最も重要ではないだろうか。そのことを私達は知らなければならないという気持ちに読んだ後させられました。
読んだ後、様々な事を考えさせられる一冊
この本を読んだ後は帰還兵について、家族について、軍について。様々な事を考えさせられる事だと思います。きっと考えても答えは出ないでしょう。それは帰還兵本人であったり、家族であったりしか解らない苦しみ。また軍という組織の考え方。
1つ解決しても再度、違う疑問点や問題が浮かび上がってくる。戦争というのは何て虚しいのだろうかと読んだ後は思ってしまった。これは特に若い人に読んで欲しいと思います。日本の未来を考えるのであれば必読と言っても過言ではない1冊だと私は思えました。