今年に入り2回目の東野圭吾作品
今年の1月に公開された木村拓哉×長澤まさみ主演映画の「マスカレード・ホテル」。この映画は面白く、原作も読んでいたので大満足出来る映画でした。
今回のパラレル・ワールドは原作を読んでいなかったので、どのようなストーリーかは一切解らず視聴してきましたが、結論を書くと「イマイチだった」という表現。これを後々に書いていきたいと思いますが、その前に今回のキャストを書いていきたいと思う。
染谷将太、吉岡里帆、筒井道隆、石田ニコル、主人公には「Kis-My-Ft2」の玉森裕太。そして映画化され原作者である東野圭吾が「完成した映画を観てうなりました。複雑な構造を持ったストーリーから逃げることなく、見事に真っ向勝負した作品でした。きっと多くの人が、この映画に翻弄されるでしょう」とコメントしていたので期待大でしたが何が「イマイチだった」のか。それを早速書いていきたいと思います。
今回のタイトルである「パラレル・ワールド」は「記憶」だった
結末を知っていても東野圭吾作品は面白いと思うものばかりでしたが、今作は違う。ハッキリ書けば2時間という短い時間では今作のパラレル・ワールドの魅力が半減すると感じた。
原作を知らない人はこの映画を観る前は「寝て起きたら彼女は親友の恋人になっていた」という予告を観てから今作を見ようと思った人も少なからずいると思います。しかし「パラレル・ワールド」というよりは今作の鍵となるのは「記憶の置き換え」というフレーズ。
映画の前半で「記憶の置換に成功した」という三輪の言葉で今回のオチが予想出来てしまう。主人公である敦賀は「パラレル・ワールド」というよりは記憶を置き換えられた事により「麻由子」が自分の恋人だという記憶と、親友の彼女という記憶。両方持ってしまいその点で苦しんでしまうのが今作のストーリーとなっています。
結末が想像出来てしまう程、主人公の敦賀はヤバイ奴に思えてくる
麻由子の事を彼女だと思っている記憶と、親友の彼女だったという記憶。この作品で説明している通りに書けばAという記憶が存在するとします。例えばAというのは「自分は京都に住んでいるが実は滋賀県出身だ」とう今ある自分の記憶です。そこにBという「自分は生まれてからずっと京都育ちだ」という願望を脳に置き換えると、AとBが混ざり合いCという記憶が誕生します。
このCというのは願望の為、Aという記憶よりも優先順位が高くなり置き換わってしまうというもの。しかも脳自身が「もともとは滋賀県育ちだった」という記憶を無くしてしまい、素振りなども自然とその場に合わせるので周りからは違和感がないというもの。
今回で言えば本来麻由子は親友である三輪の彼女だったが、偶然その彼女が通学の時に一目惚れしていた女性で敦賀は彼女に対して冷たく接してしまう事となる。しかし三輪が彼女だけではなく「敦賀にも彼女と仲良くして欲しい」という言葉に段々とストレスを感じ、彼女に好きだと伝えるが「三輪さんとの関係が壊れてしまう」と断られてしまう。それでも諦めきれず半ば強引に抱き、親友の彼女を奪った敦賀だが、親友から「俺、辛いから記憶消してくれ」と言われ極秘に研究されていた装置を使い、三輪の記憶を消そうとするが「スリープ状態」になってしまい三輪の脳が眠った状態になってしまう。
その後は敦賀が三輪をスリープ状態にしてしまった記憶を消してほしいと教授に頼むと「麻由子は自分の彼女だ」という記憶だけ残ってしまい、教授は「君には彼の監視を含めて同棲をしてほしい」と言い出し、麻由子は同棲する事となる。
これだけ書けば解ると思いますが敦賀はヤバイ奴に思えてくる。何せ「俺が先に惚れた、お前も好きだったんだろ」と麻由子に言い寄ったあげく親友の彼女を寝取るとは。親友からすれば「麻由子はお前が好きで、お前も麻由子が好きなんだろ?」と敦賀に聞いた後「あぁ」と言われれば「じゃ、辛いから記憶けしてくれよ」となりますよ。
優秀だと思った部分は撮影方法や編集などの技術
今作を視聴していた違和感が帰ってからパンフレットを見た時に納得し、感動した部分もあった。今回敦賀が本来持っている記憶を思い出しているシーンというのは16ミリ映像で撮影されている事。敦賀が思い出している映像は少し映像が淡く違和感を感じていたのですが、まさか意図的に16ミリで撮影していたというのは驚きました。
また今回のテーマである「記憶」に関係ある「写真」なども今作には多く登場します。一番解りやすいのは3人で一緒に撮影したポラロイド写真。本来3人で撮影したはずなのに敦賀の記憶では三輪がいなかった事となっている。実際に人工的な記憶や操作というのは科学的にも実験や成功例があり、これを活用すると人間の記憶も操作出来る事は可能になっていくとの事。今回は「本来いた人物の消去」だが未来的にも可能になる可能性が高いというのも面白いと感じました。
編集に関しても実際に記憶と偽りの記憶が混ざり合い、それに苦しむ敦賀に対し、周りとのギャップなど上手に描かれていると思います。「わかりやすさ」を追求した結果の編集だと思いますが最後まで視聴すると今作の内容は理解出来る事でしょう。
麻由子と主人公の気持ちをもっと表現してほしかった
結論を書けば敦賀と麻由子がラストにお互いの気持ちを語るシーンがありますが、もっと具体的に語っても良かったように思えた。これは今作を観た人であれば誰もが思ったことではないでしょうか。ラストを飾るセリフにしてはあまりにも薄すぎる為、その点がイマイチだと感じた大きな理由ですね。
パンフレットでは今作の鍵となるキーワードなどネタバレ要素が掲載されているので、劇場前に見るのは控えましょう。各キャストのインタビューが多く掲載されているので、ファンの方はパンフレットを購入する事をオススメします。
これにて映画「パラレル・ワールド・ラブストーリー」の感想とレビューを終わりたいと思います。最後まで読んで頂きありがとうございます。