レジェンド中島貞夫監督20年ぶりの長編映画
「極道の妻シリーズ」やTBSで放送された「坂本龍馬」「織田信長」「武田信玄」など、まさかに映画監督としてはレジェンドと言える中島貞夫が20年ぶりの長編映画を作成し完成したのが今作「多十郎殉愛記」。主演は「蛇にピアス」「悼む人」の高良健吾。ヒロインである「おとよ」を演じたのは多部未華子。
その他に木村了、三島ゆり子、山本千尋、寺島進など豪華キャスト陣となっている今作。
今作を観ようと思ったきっかけは予告編で流れた映像で「時代劇だ!しかも中島貞夫監督とは面白そうだから観よう」と思い観てきたのですが個人的には何ともコメントし辛い映画だったな。というのが素直な感想。それについて詳しく書いていきたいと思います。
「長州脱藩し侍を捨てた男」というフレーズにワクワクしていた
長州脱藩や新選組、そして長州と言えば桂小五郎。そして薩長同盟の立役者になった坂本龍馬。そんな名前が映画冒頭から出てくるので凄くワクワクした。この流れからどのような展開になるのだろうか。
そんな映画冒頭5分ほどで桂小五郎の姿はいなくなり、それ以後登場する事もない。坂本龍馬という言葉が出てきただけで姿を見ることはない。そうこの映画は「多十郎」が脱藩し、侍を捨て身を隠しているというのが重要なのだ。
長州の中でも腕っぷしと言われる多十郎。この映画の予告では「この男 掟破りで 最強」というフレーズが出てくる。早く戦いが始まらないかとワクワクしているが、そこは中々観せない。まずは「なぜ脱藩したのか」という話を始める多十郎。
それは当然だ。法的手続きも無しに脱藩する事は場合によっては死刑にされるほど重い罪。なぜ多十郎はそこまでして脱藩をしたのだろうか。明るい未来の為に、故郷に残した愛する人の為に。多十郎が言って言葉は。
「親の借金が多くてな。お前らが脱藩しようとしたから付いてきただけじゃ」
色々衝撃である。借金の為に脱藩したと言う多十郎。私は深く考えることを止めた。
多十郎追いかけられる!!「最強」を見せてくれ!
私は「最強」という文字が見ると興味が出てしまう。どのように最強なのか。今作は「平成最後の”チャンバラ”時代劇」なのです。しかも文化庁支援映画となっているので「チャンバラ」がどのように描かれているのか楽しみにしていたのですが....。
個人的に言えば圧倒的に物足りない。竹林の中で戦うシーンも無駄にスローモーションなどにしないで戦った方が面白いと思った。「平成最後のチャンバラ」と書くのであればラスト30分の殺陣シーンはもっと丁寧にしても良かったように思えます。
皆さんが想像している「最強」とは異なり、今作の「最強」というのは圧倒的な力差という訳ではなく、あくまでも一般侍の中での「最強」と書けばわかりやすいかも知れません。ラストの高良健吾と寺島進との一騎打ちがカッコいいと思いましたが、それ以外は何とも言えませんでしたね。
見廻組と新選組の争いが見え隠れするのは面白かった
脱藩者を切り捨てようとする新選組。そんな新選組に手柄を取られたくないとしている見廻組。町方が居酒屋で暴れ、多十郎に追いやられた事がきっかけで町方が多十郎の招待を暴こうとするが、結構あっけない。
普段暮らしていた町の住民が喋ってしまう。これは他の時代劇とは違うが、時代背景を考えると当たり前だとは思った。庇い立てすれば下手すれば拷問され殺される可能性もある。その場は逃れたとしても後々バレた時に同罪と見なされる可能性だってある。それは他の時代劇と違い現実的ですね。
そして町方が見廻組に長州脱藩者がいるという事を告げると、新選組よりも早く捕まえようと企てます。そういった時代背景が見えたのはこの映画の中で面白いと思ったポイントでした。
個人的にはレンタル、テレビ視聴でも良いかなと思える作品
例えば時代劇、中島貞夫ファンの人は辞めておいた方が良い。高良健吾ファンの人は見る価値があると思える作品でしたね。しかし私はレンタルやテレビ視聴で良いような気もします。他の方のレビューも読んだのですが配給に「よしもと」があるのですが、私の嫌な予感が的中し作品の間、間に違和感がある会話があるので、それもマイナスポイントとなりましたね。
手が写ってしまい見づらいですが、パンフレットも購入しました。各キャストさんのコメントを読んだのですが、それは面白かったですね。監督の「本当にチャンバラとは何か」というコメントは非常に面白かったので、是非読んでみてください。
これにて映画「多十郎殉愛記」の感想とレビューを終わりたいと思います。