沼田まほかるさんの原作を映画化!
2011年に発売されて以来販売部数累計25万部を超え、2012年には大藪春彦賞受賞、本屋ノミネート、「このミステリーがすごい」国内5位など現在でも大人気の小説が実写化となります。監督は「君に届け」「ジンクス!!」「心が叫びたがってるんだ」の熊澤尚人監督。キャストは吉高由里子さん、松坂桃李さん、松山ケンイチさん、佐津川愛美さん、清野菜名さん....etc。
ミステリー小説ながらも読んだ人に「恐怖」や「不気味さ」「モヤモヤ感」などを与え多くの人が癖になった作品と言えますね。気になるストーリーは。
亮介は余命わずかな父の書斎で1冊のノートを見つける。「ユリゴコロ」と書かれたそのノートには、ある殺人者の記憶が綴られていた。その内容が事実か創作か、そして自分の家族とどんな関係があるのか、亮介は様々な疑念を抱きながらも強烈にそのノートに惹きつけられていく。(映画.com引用)
では、早速感想とレビューを書いていきたいと思います。
「不気味さ」を味わった映画は久しぶり
今回は原作を読まず、映画館で初めてユリゴコロの内容を知ったのですが「不気味さ」。そして「恐怖」という映画は久しぶりに感じました。
「人間の死」を心の拠り所にして生きる悲しき殺人者である美沙子。美沙子の少女時代から始まり、その不気味さは劇場で観ている人をすぐ「ユリゴコロ」の世界へと引き込まれてしまう。
子供から少女、そして大人へと美沙子が成長するにつれてその不気味さは増してくる。子供時代には同級生の女の子が死んでいく姿に心を満たされ、中学生には帽子を取ろうとした子供を助けるフリとして殺し、大人になると興味が沸いた人間を殺し、邪魔だと判断した人間も殺す。
2時間20分という作品の長さで、沢山の殺人が起こるが「殺意」を持って殺害する映画とは違いユリゴコロは「興味」が多く「殺意」で殺害するのは少ない。それに関して私は「恐怖」を感じました。
吉高由里子さんの演技力に驚愕
映画の序盤~中盤までは「悲しき殺人者」を演じ、松山ケンイチ演じる「洋介」に出会ってからは普通の主婦を演じているシーンもある。
序盤から中盤までの美沙子の表情は固く、無表情が多いが洋介と知り合い笑顔になるシーンが多く見られる。その使い分けは本当に素晴らしいと思いました。
吉高由里子さんは連続テレビ小説「花子とアン」で村岡花子を演じ、また蛇にピアスでルイ役を演じるなどジャンルは幅広く過去の作品と比べて今回の作品は更に難しい作品だったように思えますが、それでも観ている側からすれば適任だったと思わせる演技力はまさに驚愕でした。
ノートで自分の存在を知った事で眠る「殺意」が蘇る
松坂桃李さんが演じる亮介が1冊のノートを読み始める事から物語は進んでいく。映画の冒頭では婚約者である千絵と楽しそうに語る亮介はカフェのオーナーであり、見た目は好青年だ。しかしノートを読み始めると彼はどんどん変わっていく。
まず婚約者がどこかに消えた後、ノートを発見するのだがノートに魅了されていくように読んでいく。手が震えるほどの恐怖感がありながらも読むことを辞めれなくなっていく。
そんな亮介の前に細谷という女性が現れ、自分が元同僚で2日前に彼女を見たという言葉を聞き、安心する亮介だが数日後。千絵はヤクザの女で脅され監禁されている事を知る。
映画の冒頭で亮介が車の運転を千絵に注意されるシーンがある。「そんなに飛ばさないで」という言葉に亮介は「解った」と答えるシーンがあるが映画を通して観た後、あのシーンは亮介の中に眠る「攻撃的人格」と言っても良い。
ヤクザの塩見に対し「あいつを殺す」という攻撃的な性格に変わっていく亮介の姿は美沙子同様に「恐怖」を感じる瞬間でした。
悲しき殺人者としての美沙子
幸せな家庭を築きながらも自分が殺人者だとバレてしまい死のうとするシーンがある。川で死のうとするが亮介が川に来てしまい溺れた所を助け、そのまま死のうとするのだが洋介に助けられる。
その後、ノートを見た洋介は「君はあの時死ぬべきだった」とダムに連れていくが、彼女を助け「僕と亮介には今後会わないでくれ」とその場を立ち去る。
千絵を助けに東京に行き、塩見を殺そうと思っていた亮介が見た光景は事務所の人間がすべて殺されており、その奥に監禁された千絵の姿だった。その現場にオナモミの実が落ちている事から細谷が自分の母親だと確信する。
美沙子が塩見を殺してまで千絵ちゃんを助けたのは、亮介を殺人者にさせたくなかったのか。もしくは2人に結婚してほしかったので助けのか。どちらか解りませんが最後まで「殺人」をしてしまった美沙子は「悲しき殺人者」だと思えました。
サスペンス好きなら一度は観て欲しい作品
私はサスペンス映画は好きですが、この作品は観て面白いと思いました。それは「誰が犯人か」というサスペンス映画よりも「人間に眠る殺意」が映画全体を通して感じる場面がいくつかあります。
その殺意に様々な感情を抱きながら観て欲しいと私は感じました。
パンフレットですが人物相関図、キャストインタビューなど掲載されていますが中でも熊澤尚人監督インタビューは是非読んで欲しいです。仮にこの映画を観た後に「モヤモヤがずっと取れない」という人はインタビューを読めば多少はスッキリするかも知れません。松坂桃李×吉高由里子×松山ケンイチのトークも必見です。
今週は「ナミヤ雑貨店の奇蹟」のレビューを書いているので、宜しければ是非そちらも読んでみてください。(リンクを下記に貼っておきます)。
これで映画「ユリゴコロ」の感想とレビューを終わりたいと思います。最後まで読んで頂きありがとうございました。