雫井脩介の「検察側の罪人」を実写化
意外にも木村拓哉×二宮和也が初共演に驚いた今作「検察側の罪人」。原作は「クローズド・ノート」「犯人に告ぐ」で知られる雫井脩介。監督は「伝染歌」「関ヶ原」「日本のいちばん長い日」などの話題作を手がけた原田眞人監督。
監督・キャスト共に個人的には興味のある作品だったので早速観てきました。さて、気になるストーリーですが。
都内で発生した犯人不明の殺人事件を担当することになった、東京地検刑事部のエリート検事・最上と、駆け出しの検事・沖野。やがて、過去に時効を迎えてしまった未解決殺人事件の容疑者だった松倉という男の存在が浮上し、最上は松倉を執拗に追い詰めていく。最上を師と仰ぐ沖野も取り調べに力を入れるが、松倉は否認を続け、手ごたえがない。沖野は次第に、最上が松倉を犯人に仕立て上げようとしているのではないかと、最上の方針に疑問を抱き始める。(映画.com引用)
昨年公開された映画の中では「ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~」では二宮和也の演技力は私は素晴らしいと思いました。普段とは全く異なるキャラクターを演じる事が多い二宮和也。
反対に同じく昨年公開された「無限の住人」は映画館ではないですが、ネットレンタルで視聴したのです木村拓哉は「木村拓哉感」がどの映画もそれが違和感として残ってしまうのが個人的に勿体無いと感じているのですが、今作はどうなのでしょうか。早速ですが、感想とレビューを書いていきたいと思います。
2人の検事と1つの事件にある正義と悪
今作は様々な目線で観る事が出来る面白い作品だなと思ったのが第一印象です。例えば検察の最上(木村拓哉)と沖野(二宮和也)では同じ検察ながらも全く異なる。最上はある事件の容疑者に松倉(酒向芳)の名前を観た時から感情的になり始める。
それは23年前に起きた「荒川女子高生殺害事件」の被害者の女子高生は最上が暮らしていた高校の寮の管理人の娘の由季は最上とも仲良かった。しかし15回に及ぶ任意聴取をくぐり抜け証拠不十分で当時限りなくクロだった松倉が釈放されてしまったのだ。そして時効になり悔しい思いをしていた最上の前に再び別の事件で現れたのだ。
そして沖野は新任検事として「検察の正義とは」と熱く語る最上を尊敬し、憧れ4年後。東京地検刑事部に配属される事となり最上の部下なる。同じく検察事務官として配属された橘の姿もあった。その2人が最上の変化を知り、どのように行動するか。今作の見所だと思います。
ネタバレ注意:最上が一線を越えてしまった理由
松倉が23年前に起こした由季殺害を認めた事によって、その会話を聞いていた最上はイヤホンを外しその場で崩れてしまう。なんとしてでも今回起きた事件で有罪にしたと考えていた最上だったが、別の犯人が浮上する。それが弓岡(大倉孝二)だが居酒屋で酔っ払った際に犯行をほのめかすような自慢話をしていたと目撃証言が出てしまう。
同じく最上の大学時代からの親友で一緒に勉学を共にしてき丹野(平岳大)が収賄罪の参考人として近く東京地検の取り調べを受ける事となっていた。最上は丹野が正義感の強い男だと知っており、丹野の潔白を信じていたが丹野が自殺で亡くなってしまう。
そこから最上の正義という歯車が狂い初め、何としてでも松倉を犯人にする為に諏訪部(松重豊)と手を組み、弓岡を殺し証拠も揃え。自分にとって邪魔である橘が実はジャーナリストである事をバラし。最上のやり方に疑問を感じ沖野は検察を辞めてしまう。最上にとって不利益な存在はすべて消えたかのように思えたが沖野と橘が弁護側に付いた事によって松倉は釈放されてしまう。
この後は作品を観てほしいのですが最上の歯車が狂った理由には様々な事が考えられます。23年前の殺しが松倉だと解ったが時効により逮捕出来ず、今回の犯人も別にいるという敗北感。そして信じていた親友である丹野が自殺をしてしまった喪失感。
様々な事が重なり諏訪部という悪党と組んでまでも松倉を逮捕したかった最上の正義。ハッキリ書けば正義から悪党になった訳ですが沖野がラストに「あなたが新人研修のとき言ったことを覚えていますか」という質問に対し「覚えていない」と最上は返しました。
この「覚えていない」というセリフは最上が検察としての正義を失った事が解る瞬間でした。きっと昔の最上であれば、この質問に対し的確な答えを言えていたと思います。今作は「時効」「冤罪」「収賄罪」「殺人」と現代社会で問題になっている事件ばかりなのでサスペンス映画だけではなく実際に考えてみて観るのも面白いと思います。
サスペンス好きなら観る価値はあり!?個人的には良作。
冒頭でも書きましたが木村拓哉の映画は「木村拓哉感」があると感じているのですが、今作はそれが少ないですね。今作の役柄が前半と後半とでは変わってくるのですが、それを見事演じれていたのは素晴らしいと思います。
パンフレットは思っていたより豪華で驚きました。話題作であれば分厚い事が当たり前のように思いますが、今作の「検察側の罪人」は話題作という訳ではないのでパンフレットは期待していなかったのですがボリューム感ありますね。
各出演陣のコメントから美術スタッフによるセットのこだわりなど。映画を観た後に楽しめるコンテンツが数多く掲載されているので、是非購入して観てほしいと思います。これにて映画「検察側の罪人」の感想とレビューを終わりたいと思います。