森下典子の人気エッセイが実写映画化
エッセイストで知られる森下典子の約25年に渡り自身が茶道教室での日々をつづり人気になった「日日是好日 「お茶」が教えてくれた15の幸せ」が実写映画化となります。
主演の典子を演じるのは黒木華、武田先生を樹木希林、美智子を多部未華子。原田麻由、川村紗也など豪華キャスト陣で茶道教室に通い人生について学んでいく女性の物語です。さて、気になるストーリーですが。
「本当にやりたいこと」を見つけられず大学生活を送っていた20歳の典子は、タダモノではないと噂の「武田のおばさん」が茶道教室の先生であることを聞かされる。母からお茶を習うことを勧められた典子は気のない返事をしていたが、お茶を習うことに乗り気になったいとこの美智子に誘われるがまま、流されるように茶道教室に通い出す。見たことも聞いたこともない「決まりごと」だらけのお茶の世界に触れた典子は、それから20数年にわたり武田先生の下に通うこととなり、就職、失恋、大切な人の死などを経験し、お茶や人生における大事なことに気がついていく。(映画.com引用)
故・樹木希林が出演しており先日NHKで放送されたドキュメンタリー放送でも少し今作について触れている部分がありました。今作が「人生」というテーマになっているので考えながら観たいと思います。早速ですが、感想とレビューを書いていきたいと思います。
「お茶」を通じて学ぶことは何か?
茶道教室で典子が作法を学んでいる際に武田先生が「頭で考えないで体で覚えなさい。自然と手が動くようになるから」という言葉に悩みながらも続ける事で自然と先生の言葉を理解していく。
物語は24年学ぶ典子の姿が描かれているが「お湯と水の音が違う」「梅雨と秋雨の音が違う」など普段気づけ無い事を気づき喜ぶ姿が描かれています。何気なく初めた茶道教室も典子の人生に大きな変化を与えました。例えば出版社の正社員になる為の試験前でも「今日はお茶を休む」と決めていても気になってしまい武田先生にお茶を入れて貰う典子。
その時に武田先生は達磨画を飾り「達磨さんに祈願して貰おうと思って」と典子に言います。達磨というのは七転八倒の意味あり「祈願」が込められています。言葉で伝えなくとも掛け軸で伝えるという武田先生の気持ちが典子にとって嬉しかったと思います。最愛の父が亡くなった時にも武田先生に慰めて貰い、お茶を通じて一区切りを付けたり。
典子にとって茶道教室に通う事は毎日が新しい発見との出会い場であり大事な場所だった事でしょう。
”日日是好日”の意味は映画を観るとより深い言葉に思える
日日是好日の意味とは「毎日良い日である事を思う事が大事」という意味ではありません。1日良い日であれば次の日は悪い日かも知れません。例えば「今日はお金儲かった!」と喜んでも次の日に「昨日は儲かったのに今日は損した」となるかも知れない。損得や優劣などを一旦きっぱり捨てて、その日をどう生きるか。ただ思うままに生きれば好日になる。
喜びも悲しみも一瞬一瞬を精一杯生きていれば、それが積み重なりが1日となり、今まにない素晴らしい1日となる。という意味です。
今作を観てその意味を知るのは典子の心境でしょうか。20代は若さの力で将来に不安を
感じながらも”やりたい事”を見つけようとし、30代になると周りが結婚している中、自分は婚約者に裏切られ破断となってしまい、悲しむ中、1年半後に新しい人と出会い、そして最愛の父が亡くなってしまう。
出会いや別れがあり、それらを乗り越えて今の自分がある。そんな典子の姿を観ると今作のタイトルである「日日是好日」の意味がより深く感じる事ができました。
樹木希林さんが亡くなった直後の作品なだけに武田先生の言葉が重く感じた
武田先生が「毎年こうして同じことが出来る事が幸せなんだな~って」というセリフ。NHKのドキュメンタリーでも樹木希林さんが語っていましたが「無駄な事にお金をかけない」のような事を言っておられました。亡くなる前に4本もの映画に出演され今作はその1本なのですが、病気と戦いながらも、あれだけの演技をされいて樹木希林さんの女優魂に感動しました。
今作がラストではなく来年公開される映画が遺作となるので、そちらも必ず観に行きたいと思います。
何気ない毎日が素敵な1日に変わる映画
茶道を知らない人でも、気軽にこの作品を観る事が出来るというのが個人的に評価が高いです。もちろん茶道の知識がある人も劇中に登場した和菓子などは四季折々や行事ごとに別れており、掛け軸なども季節ごとに変わっていたのが素晴らしいと思います。
パンフレットでは和菓子、掛け軸、茶碗など劇中で登場する小物の説明が掲載されている他、出演陣のコメントも掲載されています。樹木希林さんの貴重なコメントは今作を観た人であれば考えさせられるものなので是非購入して読んでみてください。
これにて映画「日日是好日」の感想とレビューを終わりたいと思います。最後まで読んでいただきありがとうございました。
日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ (新潮文庫)
- 作者: 森下典子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/10/28
- メディア: 文庫
- 購入: 13人 クリック: 39回
- この商品を含むブログ (36件) を見る