野村萬斎主演!痛快エンタメ時代劇映画「花戦さ」
監督は「地下鉄(メトロ)に乗って」「起終点駅 ターミナル」などで知られる篠原哲雄。脚本は「JIN-仁-」「世界の中心で、愛をさけぶ」の森谷佳子。音楽は久石譲を起用しキャストも豪華なベテラン俳優陣ばかりとなっています。
- 池坊専好:野村萬斎
- 豊臣秀吉:市川猿之助
- 千利休:佐藤浩市
- 前田利家:佐々木蔵之介
- 吉石衛門:高橋克実
- 石田三成:吉田栄作
- 織田信長:中井貴一
- れん(オリジナルキャラクター):森川葵
さて今回の「花戦さ」の主人公である「池坊専好」という人物は実在した人物です。室町時代後半に活躍じた人物で応仁の乱の末に華道の精神を説いた池坊専応。全国に足を運び立花を伝えた池坊専栄。その後を引き継いたのが池坊専好(初代)です。今回は野村萬斎が初代「池坊専好」を演じるという事で気になるストーリーは。
織田信長が本能寺で倒れ、天下人が豊臣秀吉へと引き継がれた16世紀後半。戦乱の時代は終わりを告げようとしていたが、秀吉による圧政は次第に人々を苦しめていた。そんな中、町衆の先頭に立った花僧の池坊専好は、花の美しさを武器に秀吉に戦いを挑んでいった。 (映画.com引用)
では、早速ですが感想とレビューを書いていきたいと思います。
感想・レビュー。華道と茶道という日本の伝統芸能
物語は1573(天正元)年から始まります。天下人である織田信長の岐阜城にて「天下人のような天を昇るような巨大な松」を使って花をいけたのが今回の主人公である頂法寺六角堂の花僧である池田専好。この池田専好という人物は権力も興味ないよく言えば天真爛漫で花をいけることのみに無上の喜びを感じる男だ。そこから物語がスタートしますがやはり何と言っても劇中に登場する花の美しいこと。華道には様々な流派があり、各流派によって技法や様式は異なります。しかしそれがまた美しい。劇中で織田信長に献上した松は高さ3m、幅4.5mという大砂物で10人がかりで14日かけて完成させたみたいです。池坊専好がいけた花は松を使った作品が多い。
六角堂執行になる前の専好がいけた除真立花。専好がいける立花というのは豪快であって美しい。大きく曲がった松がなんとも個性的で松の真ん中にある花がより華やかに見えます。劇中に登場した立花や大砂物は各テーマがあり、劇中のストーリーと共に読み取っていくのは何とも面白いと思いました。
そして今回のもう一つの伝統芸能であり現在の茶道の様式である「わび茶」を完成させた千利休。今回の花戦さでは専好と利休が語るシーンが多く登場する。中でも茶会の際に利休の茶道、専好の華道がコラボするシーンが登場しますが、私はそのシーンがお気に入りのシーンの1つとなっています。茶道と華道の違いはあっても互いの求める美を追求する心が重なりあった瞬間と言えますね。華道のお茶を点てる時の一連の流れが本当に美しい。茶道指導として鈴木宗卓が指導を行っています。利休の死の原因は様々な諸説がありますが劇中は「大徳寺三門改修にあたって増上慢があったため自身の雪駄履きの木造を楼門の2階に設置しその下を秀吉に通らせた」とする諸説を使っています。
刀を使わず「花」で伝える「花戦さ」
今作のタイトルである「花戦さ」は映画クライマックスで解る事になります。利休の自害。そして秀吉によって専好の周りの町衆が次々と殺され激しい悲しみを襲う中、専好は「花には抜いた刀をさやに収める力がある」と秀吉に対し「花」で説得する事にします。クライマックスで専好がいけた大砂物は高さ3.5m、幅7.2mと池坊でも近年でこのサイズの大砂物を作成するのは稀だとか。そんな巨大な大砂物で説得する専好ですが最後に枝が折れてしまいますシーンがあります。
大砂物の枝が折れるというシーンは冒頭の織田信長に献上した松でも観れるシーンなのですがラストの松に関しては当初、折れる予定では無かったそうです。萬斎さんが「あれ、折れたらどうなるんでしょう?」という言葉から圧倒的な花の力で秀吉に伝えるのではなく折れる事によってその場に笑いを起こし、収拾する方がすごく機知に富んだ表現になるとスタッフ全員で思い至りラストを変えたとコメントしています。私も映画を観ながら「最後は折れた方が面白いな」と思っていたので、そちらの方が良かったですね。圧倒的な花で「見事なり」と終わるよりは折れた事によって場が和んだ空気で終わった方が「花戦さ」らしい終わり方だったように思えます。
映画を見た後は華道と茶道の美しさに圧巻
華道や茶道といった日本伝統芸能は私も以前から興味があり展覧会などにも行った事がありますが今回の花戦さを見て改めて日本芸能の美しさが見て解ります。
パンフレットには各キャストや監督、脚本、音楽、題字、茶道指導、劇中絵画のコメントや各立花と大砂物の解説など数多く掲載されています。
私が今回のパンフレットで面白いと思ったのは野村萬斎×4代目・池坊専好との対談。「花戦さ」というテーマで語られるお二方の対談はとても面白かったです。お二方の芸能は違う中。”生花と狂言も日本を代表する伝統芸能ですが今も変わらず愛されている理由はどこにあると思いますか?”という質問に対し萬斎さんは「花は時間と空間を映し、無狂言は人を映し出すものだからではないでしょうか」とコメントしています。このコメントはとても深いですね。
今回の花戦さは興行収入20億円を狙える大ヒットスタートとなっています。注目すべきなのは女性客での鑑賞が目立つという事で実際に私が観た時も女性の割合が圧倒的に多かったように感じます。まだまだ公開されて3日ですがまだまだ興行収入は伸びると予想出来ます。皆さんも是非、劇場で観て下さいね。