癖になる文章だが読めば虜になる
前回のコンビニ人間が本当に面白かったので今回の芥川賞はどうなのか。そんな事を思って読んでみましたが、結構癖のある文章を書く人だと思ったのが第一印象。
作者である山下澄人さんは私は今作が初めて読んだのですがなんと言いますか「混ぜれば混ぜるほど味が出て来る納豆のような感じ」と言ったら良いのでしょうか。読めば読むほど「こういった書き方なのか」という段々癖になってくる。
きっと癖のある文章だと思ったのは関西弁が入っているからでしょうが、文章で関西弁を読むと普段関西弁を使っている私でも読みにくいと思ってしまう。買うのが遅くなってしまった理由として芥川賞発表された時に書店に買いに行った時に「しんせかい」が書店に無く取り寄せになると言われ、入荷するのを待っていました。さて、気になるストーリーは。
19歳の山下スミトは演劇塾で学ぶため、船に乗って北を目指す。辿り着いたその先は【谷】と呼ばれ、俳優や脚本家を目指す若者たちが自給自足の共同生活を営んでいた。苛酷な肉体労働、【先生】との軋轢、そして地元の女性と同期との間で揺れ動く思い。気鋭作家が自らの原点と初めて向き合い、記憶の痛みに貫かれながら綴った渾身作!
(Amazon参照)
早速レビューを書いていきたいと思います。
全体を通して読むと「経験談」という印象
【谷】と呼ばれる養成所でそこで山下スミトは動悸である2期生や先輩である1期生、様々な人物を時間を共にしていきます。その1期生が卒業と同時に物語が終わりを迎えるのですが、重要人物というのも特にいない。主人公である山下スミトも個性的という訳でもなく「物語の登場人物」という感じでしょうか。
個人的な感想としては前回受賞した「コンビニ人間」の作品が良かっただけに今回の作品は「小説」というよりも「経験談」という印象を受けました。「経験談」と思えばこの小説は非常に読みやすいのではないでしょうか。きっと「どんなストーリーなのだろうか」と読むと変に難しく考えてしまって読みにくくなってしまう印象を受けました。
1冊で164ページのうち短編小説を除くと「しんせかい」は129ページ。同時収録されている「素直に言って覚えていないのだ、あの晩、実際に自殺をしたのかどうか」は35ページだが、そちらの方が個人的には面白かったかな。ただやはり文章は癖がある。普段読んでいる小説とは違う為、少し読むのに時間がかかってしまった。帯に「文学界の異端児」と書いてあったが「なるほど」と納得しましたね。
過去の作品を読んだことが無いので解りませんが、今後新しい作品が出ればまた買ってみたいと思います。今回の「しんせかい」は個人的に「まぁまぁ」という感想でした。