二宮和也さん主演映画「ラストレシピ」
原作は演出家である田中圭一さんの小説家としてデビュー作品である「麒麟の舌を持つ男」を映画化したのが今作となります。演出家としては「料理の鉄人」「クイズ$ミリオネア」「有吉弘行のダレトク!?」など代表作は数多くあります。
今作は「おくりびと」の滝田洋二郎監督×二宮和也さんの初タッグ作品となっているので以前から注目していました。さて、気になるストーリーですが。
1930年代、日中戦争前の満洲国にやってきた天皇の料理番・山形直太朗は、陸軍からの依頼で112品目から構成される伝説のフルコース「大日本帝国食菜全席」を考案する。しかし、そのお披露目の直前、とある陰謀によって「大日本帝国食菜全席」のレシピはいずこかへと失われ、歴史の闇に消えてしまった。それから70年後の現代、一度食べればどんな味でも再現できる絶対味覚「麒麟の舌」を持ちながら、料理への情熱を失ってしまった天才料理人・佐々木充は、中国料理界の重鎮である楊晴明という老人から、失われたレシピを探して欲しいと依頼される。 (映画.com引用)
では、早速ですが感想・レビューを書いていきたいと思います。
天才料理人:佐々木充「麒麟の舌を持つ男」
二宮和也さん演じる佐々木充は癖のある男と言って良いでしょう。映画冒頭で佐々木充は「ラストレシピ」。その人が最後の食べたいと思える料理を再現し高額報酬を貰う料理人です。そんなある日も自分を育ててくれた孤児の園長が亡くなったにも関わらず仕事を優先する充がいます。
絶対味覚というのでしょうか。この映画では「麒麟の舌」という表現されていますが、そのせいで自分のお店を持っても周りのスタッフの味付けに満足出来ず「今日は客に帰ってもらえ」など自分以外の人間が信用出来ない人間です。勿論そんな彼に付いて来るスタッフやお客はおらず閉店。残った莫大な借金を「ラストレシピ」で返済しようとしていました。
今回登場する時代背景は2002年と1930年代。2002年に登場する充は「大日本帝国食菜全席のレシピを探して欲しい」という以来を受け「探しだせたら300万の頭金と成功報酬は5000万」という話に食いついてしまう。
一方1930年のシェフは西島秀俊さん演じる山形直太朗。その直太朗の元に陸軍から極秘任務が告げられる。満漢全席を超えるような「大日本帝国食菜全席を作って欲しい」という従来な任務に嬉しくも責任を感じ合計112種類ものメニューを考えようと努力します。
この2人の共通点は「麒麟の舌」という事。一度食べた味は忘れず、更に再現してしまう。そんな絶対味覚を持っている2人のシェフが時代が違えど同じ悩みを感じる場面があります。直太朗シェフは助手の楊や正太郎が自分の思い描いている味を出せない事にイラつき。充シェフも同じ悩みをスタッフに感じていました。
この悩みがどのように解決するのか。それは後々書いていきたいと思います。
山形直太朗の秘密、そしてレシピに残された意味
充は大日本帝国食菜全席のレシピを調べるにつれて「このレシピ探しは何か怪しい」という気持ちになっていきます。1930年代に話が戻り大日本帝国食菜全席というのは名目で「天皇陛下にお出しする、あなたの料理に毒を盛って欲しい」と陸軍に要求されます。
陸軍の狙いは最初からこれだったのです。満州国の国民である楊をスタッフとして招き入れたのは「楊が天皇陛下の料理に毒を入れた」という事実が欲しかったという理由を聞かされた直太朗は楊を「お前は満州国のスパイだったんだな」と追い出し、楊を守ります。
そして直太朗は大日本帝国食菜全席のレシピを陸軍の前で燃やしてしまいます。
これに怒った竹野内豊さん演じる三宅太臓は山形直太朗を射殺してしまいます。しかし直太朗は楊や正太郎と一緒に作ったレシピを死ぬ直前に違うレシピとして作っていました。それが「Recipe 1933」というレシピ本です。
直太朗には1人娘が存在し楊と正太郎は娘に会いに行き、料理屋をオープンしますが隣のお店が火事になりレシピを守ろうとして娘さんは自分の命と引き換えにレシピを守ります。そしてその娘には男の子が生まれており、その名前は「充」。充は直太朗の孫だったという訳です。冒頭で亡くなった園長が「Recipe 1933」を持っていて、楊や正太郎、そして同じ孤児で育った綾野剛さん演じる柳沢健が仕組んだ事だったのです。
そのレシピ本の最後の1ページ。そこには母が残した「充の好物」と書かれた「カツサンド」のページが書かれていました。そのレシピ通りに作ったカツサンドを園長先生の写真の前に置き、一口食べ「うまい」と残し物語は終わりを迎えます。
劇中に登場する料理が美しい
今作に登場し注目すぺきポイントと言えばやはり「料理」ではないでしょうか。しかも112品という膨大な料理とレシピ。それを作るとなるとプロフェッショナルが必要となります。
今作で活躍したのは服部栄養専門学校の精鋭たち「チーム服部」。包丁さばきなど料理の基本を二宮和也さんと西島秀俊さんに教え、料理も作成するという事は凄い事だと思います。特に映画では二宮和也さん演じる充は右利きなのですが二宮和也さんは左利き。この映画の為に右手で料理する事を練習したそうです。
最初と最後の充の変化
最初の充は「料理は自分の為に作り、その成功報酬がお金」という考え方でした。新しい料理を作るという事は過去の自分と戦い周りを犠牲にして初めて生まれるものだと。そういったセリフがありましたが「自分以外を信じない」という充。
ただストーリーが進むにつれ山形直太朗という人物を知り、そして自分の秘密を知った充は少し変化があります。それは自分で作ったカツサンドを「うまい」と思えたこと。1930代で直太朗が妻である宮崎あおいさん演じる千鶴に「そんなに他人を信じられないの?あなたは自分の料理を美味しいですか?」と言われ無言になるシーンがあります。
それはきっと図星だったのでしょう。一度食べたことがある味を再現できるほどの絶対味覚を持っている2人は「料理を美味しい」と思いながら創作した事が無かったからです。その2人の変化は映画を通じて感じる事が出来ると思います。
この映画を観終わった後「カツサンド」が食べたくなる
この映画のラストにカツサンドを作り食べるシーンを観た人は「帰りにカツサンドでも買って帰ろうかな」と思ったのではないでしょうか。実際に私も近くのパン屋さんに行きカツサンドを買ってきました。それ程料理に関しては非常に魅力的なシーンが数多く存在します。
パンフレットですが今回も各キャストのインタビューや監督インタビュー。脚本を書いたのは「永遠の0」「藁の盾」などで知られる林民生さん。インタビューは勿論面白かったのですが今作のパンフレットで一番良かったのは。
今作に登場した料理のレシピ集「大日本帝国食菜全席」。これは嬉しいですね。映画で美味しそうだと思っていたので、これを見ながらでも「ロールキャベツの雑煮風」を作ってみたいです。
これにて映画「ラストレシピ 麒麟の舌の記憶」の感想とレビューを終わりたいと思います。最後まで読んで頂きありがとうございました。