スティーブン・スピルバーグ監督が送る衝撃の実話
スティーブン・スピルバーグが送る衝撃の実話。「ペンタゴン・ペーパーズ暴露事件」を題材とした映画となります。今作のキャストはワシントン・ポストの編集者であるベン・ブラッドリーを演じるのはトム・ハンクス。そしてワシントン・ポストの出版者であるキャサリン・グラハムを演じるのはメリル・ストリープ。
トム・ハンクスとメリル・ストリープの共演は実は初めてというのは驚きです。トム・ハンクスとスティーブン・スピルバーグのタッグは数多くあり「プライベート・ライアン」「ターミナル」など数々の名作が存在します。さて、今作のストーリーですが。
ベトナム戦争が泥沼化し、アメリカ国民の間に疑問や反戦の気運が高まっていた1971年、政府がひた隠す真実を明らかにすべく立ち上がった実在の人物たちを描いた。71年、ベトナム戦争を分析・記録した国防省の最高機密文書=通称「ペンタゴン・ペーパーズ」の存在を、ニューヨーク・タイムズがスクープする。ライバル紙でもあるワシントン・ポスト紙の発行人キャサリン・グラハムは、部下で編集主幹のベン・ブラッドリーらとともに、報道の自由を統制し、記事を差し止めようとする政府と戦うため、ニューヨーク・タイムズと時に争いながら連携し真実を世に出すため奮闘する(映画.com引用)
この実話をどのように映画化したのか。その点を踏まえて感想とレビューを書いていきたいと思います。
そもそも「ペンタゴン・ペーパーズ暴露事件」とは?
「ペンタゴン・ペーパーズ」と呼ばれる文章はベトナム戦争とトンキン湾事件に関する非公開の政府報告書の事を言います。
47巻構成で約100万語という膨大な文書なのですがこの文書を簡単に書くとベトナム戦争の際「20万人規模の軍隊が必要」とされた分析を議会、国民に隠しケネディとジョンソンの両大統領と政府高官はお互いの異なった思惑からベトナム戦争にドラ沼に引きずり込まれるように介入していった過程が書いてありました。
この事からベトナム戦争への見通しがないと解っていながらも若者を戦地へと送っていた米国政府に対し国民の”信用性”が無くなっていくのです。
この文章を最初に暴露したのがニューヨーク・タイムズの執筆者の1人、ダニエル・エルズバーグ(当時ランド研究所に勤務)がアンソニー・ルッソと共に機密文章をコピーしニューヨーク・タイムズの記者に手渡ししました。
ニューヨーク・タイムズは特別チームを作り「ペンタゴン・ペーパーズ」と報道するのですが当時のニクソン大統領は「機密文章の情報漏洩だ」と司法省に命じ記事の差止めを求め裁判を起こすのです。一審では訴えが却下され高等裁判所では訴えは認められるのですが、最高裁では「政府は証明責任を果たしていない」という理由で却下される事となります。
機密文章を窃盗したエルズバーグとルッソは起訴されホワイトハウスの情報工作を担当していたチームが信用を失脚させる目的でエルズバーグのかかっていた精神科医の事務所に侵入しカルテを盗もうとした事が判明し「政府の不正」があったとされ裁判は却下される事となります。
現在では「ペンタゴン・ペーパーズ」は2011年に機密指定が解除されウェブサイトで見ることが可能となっています。全7000ページという膨大な量ですが公開された当時は話題になったそうです。
トム・ハンクス&メリル・ストリープのタッグは素晴らしい
今作はニューヨーク・タイムズよりも「ワシントン・ポスト」に目線が置かれています。ニューヨーク・タイムズがペンタゴン・ペーパーズを掲載し政府から掲載中止命令が出された際、同じくペンタゴン・ペーパーズのコピーを入手したワシントン・ポストは「この記事を載せたい」という気持ちになります。
しかしワシントン・ポストは地方のマイナー紙でしたが当時の米国の新聞社で唯一の女性経営者だったキャサリン・グラハムは激しいプレッシャーの中、掲載の許可を出す事にしたのです。この時、ワシントン・ポストは家族経営から株式公開へと動き出したばかりで、これで逮捕されてしまうと株式公開は中止となりワシントン・ポストは倒産する事となっていました。その中、記事を公開すると宣言したキャサリン・グラハムの勇気は相当なモノだったと言えます。
そんなキャサリン・グラハムの葛藤する姿、勇気ある姿。手の動きや顔の表情などメリル・ストリープの演技は素晴らしいものだったと言えます。そしてベン・ブラッドリーを演じたトム・ハンクスとの相性も抜群でした。
1人は気弱な経営者。1人は熱血な報道に対する気持ちを持っている編集主幹。性格は全くの逆だと断言出来る2人ですが今作を観ると良いタッグだと言えます。
政治とメディアの関係性がよく解る作品
「最高機密文書」として残る理由はなぜなのか。それが今作で理解出来たと思います。残す理由として「国民に教えるべきだ」ではなく「数年後、数十年後に見た人がなにか気づくはず」。
今作を見て「報道の自由」という言葉をトム・ハンクス演じるベン・ブラッドリーが度々使うのですが「報道が政治に負けてしまうと、今後【負けた側】として生きていかなければならない。それはすでに新聞社としては終わっている」という表現を使っているのですが、そういった時代背景も面白いと感じました。
今作の時代背景が1970年代なのですが2018年の現代でも「ネットでの自由な発言」が出来ない事を考えると今も昔も紙とネットの違いはあるものの、変化が無いというのは不思議な気持ちになった。
難しいテーマだが是非観るべき!
ペンタゴン・ペーパーズは今作が公開されるまで知らない事ばかりですが、調べてみると歴史的に観ても非常に重要な事だったと感じます。特に「報道の自由」という言葉の重みが伝わる作品だと思います。
さて今作のパンフレットですがペンタゴン・ペーパーズ暴露事件に関する詳しい内容や各キャスト・監督のコメントなど今作を観た後楽しめる内容ばかり掲載されています。「戦争とメディア」という難しいテーマですが是非観てほしい作品だと私は思いました。
これにて映画「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」の感想とレビューを終わりたいと思います。最後まで読んで頂きありがとうございました。
「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」オリジナル・サウンドトラック
- アーティスト: ジョン・ウィリアムズ(指揮者)
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- 発売日: 2018/03/21
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